脂質が及ぼす影響

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最近はテレビなどでも取り上げられるようになってきたのでご存知の方も増えてきましたが、油(脂質)には、積極的に摂るべき油、なるべく控えた方がよい油、摂ってはいけない油があります。まず図7をご覧ください。

これは細胞膜の模式図ですが、このように細胞膜は脂質が重なり合った二重構造をしています。細胞膜には、電解質(イオン)の流入出を調整しているイオン チャンネルというゲートがあり、細胞の内側と外側では、それぞれの電解質で分布が異なっています。

こうした電解質の分布差により、活動していない静止状態の細胞では、細胞内7 の電位は細胞外に比べてマイナスになっています。 「私たちが何らかの活動をする際、一番初めに起こっている生理的な現象が、細 胞の外から細胞の中へプラスイオンを取り込むことです。これによって細胞内外 の濃度差が逆転することでスパイク電位という電気信号が発生し、これがさらに 次々に神経を伝わることで、私たちは体を動かしたり言葉を発したりしている わけです。

このように考えた場合、細胞の膜が軟らかいほど、電解質の流入出がスムーズ に行われることになるので、細胞膜が軟らかいか硬いかの違いは重要な問題です。 最初に述べた、積極的に摂るべき油、なるべく控えた方がよい油、摂ってはいけない油の違いは、まさにこの細胞膜を軟らかく保てるか、硬くしてしまうか、という部分にあります。
 

積極的に摂るべき油・なるべく控えた方がよい油

脂質は、動物由来の油に多く含まれ常温で固体の「飽和脂肪酸」と、植物由来 の油に多く含まれ常温で液体の「不飽和脂肪酸」にわけられます。
不飽和脂肪酸は、化学構造の違いからさらに「ω(オメガ) 3系不飽和脂肪酸 (以下オメガ3)」、「オメガ6系不飽和脂肪酸(以下オメガ6)」、「オメガ9系不飽和脂肪酸(以下オメガ9)」にわけられます(図8)。

このいずれの脂質が細胞膜に多く存在するかが、細胞膜の性質を決めるうえで 重要な要素となります。「まず、積極的に摂るべき油はオメガ3です。オメガ3を代表する代謝産物として、「EPA(エイコサペンタエン酸)」、「DHA(ドコサヘキサエン酸)」が挙げられます。 EPAやDHAには、第1章でみてきた海馬での神経新生を促進したり、神経を保護する働きがあることがわかっています。うつ病やPTSD(心的外傷後ス トレス障害)に対しても効果が期待できるという論文もあり、イライラ対策としても有望株といえるでしょう。
EPA・DHAは、魚油、特にサンマ・イワシ・ブリ・サバなどの青背の魚に 多く含まれます。なるべく魚を積極的に摂ることが望ましく、少なくとも週に3 食は魚料理を食べたいところです。

しかし、魚が苦手だったり、嫌いではないけれども食べる機会があまりないと いう方もいらっしゃるかと思います。そんな方におすすめなのが、「α-リノレン酸」を豊富に含む、亜麻仁油、えごま油などです。α-リノレン酸は生体内で代謝されてEPA・DHAになります。ここで気をつけなくてはならないのが、α-リノレン酸はとても酸化しやすく熱に弱いため、 保管方法や調理方法に工夫が必要である点です。なるべく冷蔵庫で保管するよう にしたうえで、非加熱調理、例えばサラダのドレッシングとして利用したり、食べものが冷めてから使うなどするとよいでしょう。

続いて、なるべく控えた方がよい油をみていきます。 オメガ6の代謝産物である「アラキドン酸」は、肉・卵・乳製品などに多く含まれますが、これらは細胞の膜を硬くしてしまう傾向があります。注意したいのは、例えばサラダのドレッシングに使われる油や、加熱調理に使う油の多くがオ メガ6だということです。

先に、オメガ3が熱に弱いという話をしましたので、加熱調理にはどういった 油を使えばいいのか、疑問が湧いたかも知れません。加熱調理には、不飽和脂肪酸の中では比較的熱に強いオリーブオイル(オメガ9)、あるいは不飽和脂肪酸の仲間からは外れますが、極めて熱に強いココナッツオイルがおすすめです。

ここで誤解のないように申し上げておきますと、オメガ6も必須不飽和脂肪酸であり、体にとって必要不可欠な油である、ということです。
問題なのはこれらの過剰摂取であり、オメガ3とオメガ6の摂取比率こそが重要になります。現代の欧米化した食生活では、重量%で計算した際に、オメガ3 が1に対してオメガ6が10以上になってしまっている場合が多いのです。
原始時代にはオメガ3とオメガ6の比は約1対1であり、脳にとってはそれくらいが理想であるという研究がありますが、そこまでもっていくのはなかなか難しいのが現状です。
 

摂ってはいけない油

植物由来であるがゆえに、体によいと思ってマーガリンを選んでいる、という人が未だにいますが、これは間違いです。
植物由来の油は多くが常温で液体ですが、これを硬化するために水素を添加して て作られるのが「トランス脂肪酸」です。トランス脂肪酸は、細胞膜を硬くしてしまうだけでなく、LDL(悪玉)コレステロールを増やしHDL(善玉)コレ ステロールを減らしてしまうことから、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患の発症や、認知機能の低下に関わっていることが指摘されています。
そのため、現在ではトランス脂肪酸を禁止・規制する国が増えてきています。 マーガリンはこのトランス脂肪酸を含む加工食品の代表ですが、最近ではトラン ス脂肪酸不使用を謳っている製品もみられるようになってきました。

逆にそうした記載がなければ避けた方が無難でしょう。そのほか、トランス脂肪酸を含む代表的な加工食品としては、ケーキなどに使うショートニング、一部 のコーヒークリームなどです。
ここで注意点としては、トランス脂肪酸を含む加工食品の原材料をみたときに、 マーガリンやショートニングといった表記ではなく、「加工油脂」などと記載されていることです。

トランス脂肪酸の摂取とイライラとの関連は明らかではありませんが、認知機能の低下に関わることや、そのメカニズムから考えて何らかの関連があってもお かしくありません。イライラしやすい方は、これらトランス脂肪酸を知らず知らずのうちに摂ってしまってはいないか、改めて確認してみてください。

 

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