個人的要因とスピリチュアル(精神的)な視点

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個人によって引き起こされるストレス反応が異なる点(個人的要因)について突き詰めていくと、最終的には人間存在をどう捉えるか、ということに関わってきます。このことを考えるうえでのヒントは、WHO(世界保健機関)憲章における健康の定義の変遷にみることができます。
すなわち、1948年に記された健康の定義では、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう」とされました。

しかし、それから約3年後に出された改正案においては、これらに「ダイナミック(dynamic)」「スピリチュアル (spiritual)」という2つの言葉が追加されたのです。 「私たちは、健康の対極に病気があるという具合に、つい「健康」と「病気」を 相反する概念として捉えてしまいがちです。患者さんのお話を聞いていると、ある日突然不運にも病気になってしまった、というように考えていらっしゃる方が 少なくありません。しかし、実際には、病気の芽とでもいうべき状態が少しずつ 少しずつ積み重なって、やがてそれが病気として現れるわけです。

1つ目の「ダイナミック」という意味は、健康と病気は対極にある概念ではなく、それらが動的(=ダイナミック)に繋がっているということを意味しています。
2つ目の「スピリチュアル」については、「肉体的にも、精神的にも、スピリチュアルにも、そして社会的にもすべてが満たされた状態」という部分に追記されました。つまり、人間は、肉体・精神としての存在であるだけでなく、スピリチュアルな存在でもあるのだ、と敢えて言及しているわけです。
このスピリチュアルという言葉をどう日本語に訳すかについては、これまでさまざまな議論がなされ、魂とか、霊とか、人間の尊厳といった訳語が検討されま したが、未だに結論は出ていないようです。


現在、高度に専門化・細分化された西洋医学は、ともすると「臓器別医療」 「木を見て森を見ず」と揶揄されることがあります。こうした背景には、デカルト以降主流になった、心と体は別のものであるとみなす心身二元論や、部分を寄せ集めたものが全体であると考える還元主義があります。
しかし、これまでもみてきたように、心と体は密接に関係していますし、人という存在の総体は、決して部分の寄せ集めではありません。また同時に、人は単独に存在するのではなく、それを取り巻く環境すべてと繋がっている存在でもあります。

このような人間存在の全体性を表す言葉として、「ホリスティック」という用語がありますが、この語源となっているのが、ギリシャ語で全体という意味を持つ「ホロス」です。健康を意味する「ヘルス (health)」や、癒やしを意味する 「ヒール (heal)」なども同様に、ホロスが語源となっています。

私は、先の「スピリチュアル」という言葉は、こうした全体性を表す言葉であると捉えるとわかりやすいのではないかと考えています。 実は、最終的にWHO憲章の健康の定義は改正には至らなかったのですが、人間存在の本質をボディ・マインド・スピリット三位一体で捉えようとする健康観がWHOで議論されたことは意義深いと思います。
困難を乗り越える力=レジリエンスを高めイライラに対処する具体的な方法は、従来の個人的要因である体・心・習慣に、スピリットを加えた視点でみていくことが大事です。

 

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