私たちは普段、特に意識を集中することもなく、漫然と食事をしてしまっていることが多いのが実情だと思います。テレビをみながら、本を読みながら、ある いは仕事のことを考えながら食事をするとき、たとえそれらがどんなご馳走だっ たとしても、本来の美味しさを感じることなく、ただ単に口を経由して体に取り込まれるだけになってしまいます。「そんなときには、食べものの本来の有り難さに感謝するといった気持ちは微塵も感じられないでしょう。食べる瞑想を行うと、このことがよくわかります。
食べる瞑想では、味覚だけでなく、五感を研ぎ澄ませて食事という行為と向き合うことで、普段の漫然とした食事からは思いもよらないようなさまざまな気づきを得ることができます。その過程で、例えばその食事を作った人の思いや、食べものの有り難さそのものなどに気づくこともあるでしょう。
こんなにも自分の心を豊かで幸せな気持ちにしてくれるものが身近にあったのか、と感動するかも知れません。食の本質を見直す意味からも、食べる瞑想はと てもおすすめです。ここからはマインドフルネスではおなじみの「レーズンエクササイズ」という方法を紹介します。
■ (1) まず、ゆったりした姿勢でイスや床に座ります。一粒のレーズンを取り出して手のひらの上に置いたまま、それをじっと眺めます。
あたかも初めてレーズンをみるかのような新鮮な気持ちになって、色々な角度からじっくりと観察します。形や、表面の色や光沢、しわの状態など、とにかく 隅々までつぶさに観察します。
もしかすると、「なぜこんなことをしなければならないのだろう」とか、「小さい頃は干しぶどうが嫌いだったな」など、雑念が浮かんでくるかも知れません。 ここで例によって「雑念、雑念」と気づきを入れて、レーズンの観察に戻ります。 これは以下の過程でも同様です。
■ (2) 次はレーズンを手のひらの上で転がしたり、手にとって指で触ってみます。
軟らかさや固さ、べたつく感じ、指で押してみたときの感触など、集中して観察します。
■ (3) 今度は、匂いを嗅いでみます。甘い匂い、酸っぱい匂い、あるいは想像と違った意外な匂いを感じるかも知れません。ここではただ、匂いを嗅ぐことだけに集中して、ありのままに観察を続けます。
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■ (4) 十分に見て、触って、嗅いでみたら、いよいよレーズンを口の中に入れてみます。ここからは目を閉じてもかまいません。口に入れてもすぐに噛むのではなく、まずは舌の上に置いてみます。どのように感じるでしょうか。表面の舌触りやレーズンそのものの重さ、風味などを感じてみます。そうこうしているうちに、唾液がじわーっと出てきたり、早く噛みたいという衝動が起きるかも知れません。このような自分に起こる反応や感情にも気づけるようにします。
■ (5) では、ゆっくりと噛んでみましょう。まずひと噛みします。食感はどんな具合か。ジューシーな甘みや香りが口の中や鼻に広がるでしょうか。沸き起こるあらゆる感覚に集中して意識を向け続けます。そして、2回、3回とゆっくり味わいながら噛みます。次第にレーズンは小さなかけらになっていきますが、その様子も口の中で観察します。
■ (6) 十分に味わったと思えたら、ゆっくりと少しずつレーズンを飲み込みます。 喉を通ってレーズンが胃に落ちていく感覚にも意識を集中するようにします。 ゆっくり、ゆっくりです。
胃に届いてからは、レーズンが自分の身体の一部になるような感覚を抱くかも知れません。そのような感覚も含め、余韻を十分に味わいます。目を閉じていた 場合には、ゆっくりと目を開けてレーズンエクササイズを終えます。以上の過程を、10分から5分くらいかけて行います。
レーズンエクササイズはいかがでしたでしょうか?
食べる瞑想は「今この瞬間に意識を向けて、余分な思考や感情を入れずに現実をありのままの状態として認識する」というマインドフルネスに基づき、ストレスを低減することができます。