
「まだ小さいからわからない」と決めつけない
家庭は、子どもが接する最初の社会。 成長していくにつれ、公園でのコミュニティ、保育園や幼稚園、小中学校、習い事 や塾といった校外のコミュニティ、そしてバイトやボランティア・留学、就職......というように、より大きな社会に出ていくわけですが、そのすべてのベースを作っているのが家庭での人間関係、親子関係です。
「たかが家庭」「たかが家族」ということは決してありません。
そこできちんと言いたいことを伝えて理解されたか、相手を理解し受け入れることができたか、喧嘩しても仲直りできたか、協力できたか、といったことは、これから 出て行く社会での人間関係の自信へとつながっていきます。
家庭で培った人間関係・信頼関係は、一生の基礎にもなります。
家庭で子どもの人間関係力を育てるには、子どもに家庭のなかでの「役割」を与えてあげることが大切だと言われています。
自分は役に立っている、助けてあげられている、自分が参加することでこのコミュニティが成立しているという気持ちは、無意識のうちに大きな自信につながり、将来、社会や自分の家庭において積極的にコミュニケーションをとっていこうという意識につながります。
人間関係力を育てる1つの方法としてやってほしいのが、「お母さんの気持ちを話してみる」ということです。お母さんがいつ、どう感じるのかとか、どうしてくれると 嬉しい、どこで困っているとか。「子どもだからわからないだろう」と決めつけずに、 子どもを頼れる存在として扱ってみてください。
そして「自分の素直な気持ち」を、子どもを信じて話してみましょう。 お母さんも、ひとりで抱え込んでいたことを話してみると、気持ちがラクになるか もしれません。
そして思っていたより、よっぽど子どもに理解力があって、お母さんを気にかけてくれていて、感情を共有できる力を持っていることに気づけることでしょう。

妹に手を焼く母の気持ちを理解した兄
上の子の卒園間近の3月、仕事や卒園式の準備で忙しく、ストレスとプレッシャー がかかっていた。
そんなとき、夫の数日間の出張が度々入るようになった。夫の力を借りず、ひとりで平日の夜をまわすことに慣れておらずアタフタ。 その状態のなか、きょうだいゲンカや、イヤイヤ期の下の子の主張にもつきあわねばならず、ストレスはマックスだった。
イライラして子どもに接するなか、上の子の「早くお父さんに帰ってきてほしい」 のひと言に、我慢の限界を超えてしまった。
実は、それ以前から前触れがあった。出張のたびに、下の子に対してイライラすることが多く、「出張が怖い」「お父さん行かないで」などと上の子が言っていた。
笑い流してはいたものの、「こっちはこんなに精一杯頑張っているのに......」というやるせなさ、悲しみ、苦しみが募っていた。 出張に行く夫への恨みも相当溜まっており、少し鬱っぽくなっていたのかもしれない。
そんななかの、「早くお父さんに帰ってきてほしい」というセリフ......。 「なにそれ! 嫌味なの。お父さんがいればいいんだね。もう出て行く!」
ドアを開け、家から出て行こうとしたら(玄関先で気持ちを鎮めようと思っただけだったのだが......)、上の子が大泣きしながら追いかけてきて、「行かないで!」とすがってきた。
子どもの泣き顔を見て、はっとした。子どもを追いつめるようなことだけは、絶対にしたくないと思ってきたのに......。
1カ月後くらいに上の子と二人きりになったとき、ポツンと「あのときあんなこと言われて、すごく悲しかったんだ。今でも悲しい」と言われた。
まだ小さいからと思い、今までは親の気持ちを話したことなどなかったが、自分も言われて悲しかったこと、そのときすごく疲れていたこと、出て行くつもりなどなかったことなどを率直に話した。
上の子はそれを聞いて、「お母さんは、ぼくのことを嫌いになったわけじゃなかったんだ」と安心した様子。「これから大変なときは手伝って。一緒に頑張ろう」と言うと、「頑張る」との返事。
それ以来、夫の不在時に下の子がごはんを食べなかったりわがままを言うと、「ぼく が食べさせてあげるよ」と、サッとやってくれる。
子どもに気持ちを話してもいいんだな、頼れるところは頼ってもいいんだな、そのほうが信頼感も生まれるのだなと思った......。
安心感も信頼感も生まれる
息子さんも、お母さんの気持ちが聞けて安心したのでしょう。
話してみないと、大人の抱える事情は子どもには推測できないもの。
自分の気持ちを共有して共感してもらうことで安心できるのは、子どももお母さんも同じです。
家庭は最初に触れる一番小さな社会です。そして母親との関係が、生まれてから最初に作る人間関係。大切なのは、関係の立て直しができること。
自分の気持ちを伝えることも、子どもが家族の気持ちを理解し共感して、自分が助けになれるとわかることも、健全なセルフイメージを作り上げて人との関係作りに自信を育むための第一歩になっていきます。